内海新聞のブログ

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2040:心臓外科手術で知っておくといい話

 まあ、みなさんもそのうち心臓外科手術をするはめになると思うので、その際に今、私が得ている情報を共有しておきます。

■オフポンプは「しなくなっている」ほんと?
 以前、上皇の心臓外科手術をした順天堂の天野教授のインタビューは興味深く読みました。彼は6000人の手術をしてきた。だから「信じてだいじょうぶだろう」という見込みで上皇の心臓手術をすることができた。
天皇の執刀医・天野 篤 特別インタビュー(プレジデント2012年)
https://president.jp/articles/-/6361?page=1
上皇の場合「天野医師的には普通にできる簡単な方」だったそうです。で、その彼が心臓バイパス手術をする際の手法として「オフポンプ」でやっていると。

このオフポンプというのは「心臓を止めずに」「心臓が瞬間的に止まった時に」「医師の神業で」「縫ったりする」という……聞いていてもなかなか恐ろしい技なんですが。それがいいと。

ちなみに心臓をいったん止めて、外部の人工心肺装置で死なないようにして手術するのを「オンポンプ」といいます。

実は、もともとは心臓バイパス手術などでは「いったん心臓を止めて人工心肺でやる」このオンポンプが基本だったのですが、問題がありました。

ひとつは「外部の人工心肺に血液を通すと」「赤血球が壊れて」「血の成分が悪くなる」
「外部に血を露出するので感染症リスクも生まれる」

なので、なるべく心臓と血液を体内で維持しながら「心臓だけさわる」オフポンプのほうがいいということだったようです。

ただ、動いている心臓が止まる一瞬でやるのだから……外科医の技量は相当いる。天野医師なんか「日々、手先のトレーニング」かかさないそうです。

「考えずに、すべてのプロセスを機械的にやりのける」「想定外、緊急事態が生じたら初めて自分の思考で乗り切る」……そういうリアルタイムで……恐ろしい現場です。

やっぱ外科医の存在、ステータスは大きいよね。病院の看板はやっぱ外科医になる。

以前、心臓外科医の南医師の話をNHKでみたことがあるけど「老人の患者とか、血管触ったら動脈硬化で崩れてボロボロになってあせる」とか……日常茶飯事だそうです。

「それをどうするか?」「とっさの判断、機転」がいると。

マニュアル通りに手術も思ったようにならない世界ですね。だから、外科医の技量は「異常事態・ピンチ」で「どうやれるか」が能力の大事な部分になる。

これ……私のITのシステムやっている人間でも同じことです。「マイクロソフトのマニュアル通り」「設計してやって」「入れたのにうごかねぇ」「止まった」「プログラム見直した」「どう見ても間違っていない」「なのに動かない」「どうすんだよ」の……あの現場そっくりです。

私の場合は「めんどくさ」「システム再起動」「電源オフ」「再インストールで仕切り直し」とかやれるけど……心臓外科医はできないよね「問答無用」「止めたらダメ」なんだから。

さて、その天野医師らが採用している「オフポンプ」なんだけど、先般、私の主治医の循環器内科医に聞いたら「今はしてないよ」って言ってました。

「どういうことですか?」
「いっとき、オフポンプはやって、みんなやったんだけど、結局、生存性とかたいして人工心肺と変わらないので、今はみんな人工心肺でやってるよ。うちも」
「人工心肺問題ないんですか?」
「ないよ」

あっさりでしたね。天野医師がオフポンプでやっていた2012年から今は12年経過して「現場のトレンド」「技術」変わっているということです。

だけど、うちの医師はそう言っていたけど、愛媛だと心臓外科手術でオリックス生保のセカンドオピニオンサービスが教えてくれた「目安としてのレベル高い病院」はこうなっている。
愛媛県の場合2021年時点での心臓バイパス手術の実績は
1位:愛媛県立中央病院……バイパス50件
2位:愛媛大学病院……45件
3位:松山赤十字病院……41件

なので、これぐらいの件数こなしていて「最低ラインだろう」と。電話相談のアドバイスだと「やっぱ100件以上とかクリアしているほうがいいでしょうけど」「田舎の愛媛だとこの程度で認めるしかないでしょう」

これって消化器内科の手術で大手術となる「膵頭十二指腸切除手術」8~10時間コースのあれでの基準「年間手術件数50件越え」「ヘタレでも30件以上はほしい」と同じ考え方になるね。

ふむふむ、毎度、オリックスの生命保険で受けられる「セカンドオピニオン」「24時間電話健康相談サービス」使えます。

無料だし。何回でもなんでも相談できるよ。しかもけっこう、いいネタ教えてくれる。このサービスやっているのは「ティーペック」なんだろうけど、あそこけっこう優秀なんで。

外資の保険でもティーペックのサービスは使っているので、「一番安い保険料」で保険入って使うのも「あり」だね。

■手術件数で決めたらよくないというけど
 それで、世間の「手術件数ランキング」が正しいかというと……「絶対ではない」「件数だけやって」「失敗も多いはずだろ」……それも正しい。

だけど、膵頭十二指腸切除術みたいな高度な手術だと、肝胆膵の学会でも
「高度技能指導医」で
消化器外科専門医または指導医の資格をもち、肝胆膵外科診療に指導的立場で従事し、高難度肝胆膵外科手術を【100例以上】行った経験

だし
「高度技能専門医申請のための手術実績数」でも
高難度肝胆膵外科手術【50例以上】を、修練施設において高度技能指導医または高度技能専門医の指導の下で術者として行います。
http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=3

こんな感じなので「ひとつのジャンルの手術」で「50件」以上手術をこなすのが「できる外科医として」数字的に要求されています。

統計でも年間50件以上こなしている病院は「死亡率が低い」「手術件数が少ない病院は」「予後不良、死亡率が高い」という統計が……出ているのです。

この判断基準は心臓外科でも一緒なんでしょうね。なので、やっぱ心臓外科のような高度な手術になると「病院の実績」きちんと聞いてから選ぶ方がいいです。

カルーで誰でも検索できるので。これで調べるといいよ。
https://caloo.jp/hospitals/search/all/t322

■でも、オフポンプで通しているようなんだが
 愛媛の場合、優秀な病院のひとつとして「松山赤十字病院」があります。私が関東にいたときは「大田原の日赤」「武蔵野赤十字」……「やばい」で知っていたので実際「パッとしなかった」んだけど、西日本だと日赤って優秀で頼りになる病院なんだよね。

で、松山の日赤は調べると優秀なんだよね。もとが旧帝国海軍の病院からスタートしていてプライドも高い。

医師は、愛媛県の愛大とかに頼るのでなく、九大とかレベル高い医師が来てるんで……なるほど……って感じなんですけど。

それで松山赤十字の心臓外科も「九州大学医学部」で牛耳ってます。ちなみに「がん情報チャンネル」で有名な佐藤典弘医師もすい臓がんの外科医で、九大出身。アメリカ留学もしています。
https://www.hmv.co.jp/artist_%E4%BD%90%E8%97%A4%E5%85%B8%E5%AE%8F_000000000758783/biography/

ということで九大グループ……強いんだよね。ところがこう言ってますね。
冠動脈バイパス術(松山赤十字病院
https://www.matsuyama.jrc.or.jp/aboutus/fields/cardiovascular/target/
冠動脈バイパス術では人工心肺を用いずに心拍動下に行う人工心肺非使用心拍動下手術(オフポンプバイパス術)を基本術式とし、現在8~9割の症例に対しオフポンプバイパス手術を施行しています。

心臓の機能が高度に低下した症例(1~2割)では人工心肺を用い心臓・循環の補助をしながら心拍動下にバイパス手術を行っております。

……あれ?オフポンプがメインじゃん。あれれ、うちの主治医の言ってたの「間違い」かな???

ってなるわけ。こういう感じなんで……「医師で見解が違う」「自分の得意な術式、マシーンが優先」で主張が変わるのよ。

これ、毎度経験していて……一番多いのが「うちの病院にない機材の話は」「否定」「ダメ扱い」にする傾向が多い。

以前も東京医大で「ガンマナイフがない」ので、東京女子医大で「ガンマナイフ」やっているのに「あれはダメですよ」とか……平気で言うから。「リニアックがいい」……自分ところガンマナイフ……ないから。

患者がこういう病院側の論理で「トラップひっかかり」「翻弄されて」「本当に希望する治療を」「選択できなくなる」のよ。

■診断、治療法……一人の医師、ひとつの病院で信じて決めると危険な理由
 なので、これまでも言ってきたけど「セカンドオピニオンでなく」「フツーに最初から検査・診断しなおし」での「ダブルチェック」がいる。重大な病気だったらなおさらしないと……。

森永さん「なんのがんかわからないまま」「すい臓がんじゃないの」ってくらっただろ……ああなる。「病名の確定診断」が失敗したら「治療方針」「治療計画」全部ミスるわけ。

だから病気の治療って「最初の確定診断」がとても大事なの。そこにきちんと時間と労力を使うべきなの。

プラス、手術や治療法についても同じアプローチでの「病院ごとの相手医師の見解」「方針」聞いて、比較表にでもして「患者や家族でどれにするか検討」するといいんだよ。そうしたら「真実が見えてくる」。かかる費用もきいて比較するといいよ。

しないで、一人の医師に「先生お願いします」でやっちゃうと……ドツボにはまる。

まあ、言いにくいけどさ。今の先生の考え違いやミスを、あなたが真相みつけて「正しくない」と言ったら……怒るかもしれないし、気分も損ねる人もいるけど、でも、やっぱ患者のために治療ってやるんで。医師のためにやるわけでないので。負けずに言った方いいよ。家族つれて脇で録音やメモを粛々ととること。

家帰ってから相手医師が言ったことを聞き直すといいよ。すると医師が何を言っていたか……理解する。

私なんか医師の学会、権威ある病院の見解などを印刷して医師に渡して「これどうですか?」ってやるもんだから、医師側もびびって「あー、それは」「それ正しいです」「いいと思います」……毎度だよ。勉強していない医師も多い。

なんで患者の俺のほうが「医療技術詳しいんだよ」ってなる。

■医師とどうやって検査や治療法を話せばいいの?
「自分の治療の希望内容」「箇条書きでメモで書いて」「やりたい治療法があったらホームページの印刷でもつけて」「紙の資料」で「受付」に「渡して」「先生に事前に読んでいただけますか?」ってやるといいよ。自分と相手の分で2部あるといい。

そのほうが要領よく話ができる。

しかも、私のアイデアとか主張認めるのはいいけど、じゃあ?あなたの得意満面で私に言っていた内容……なんなの?ってなる。患者が無知だからと思って「ごまかしている人」けっこう多いんだよ。

患者がベストにならない医療じゃ……だめだよ。

今だって「CTが安いし早いし、件数こなせるから、診療報酬稼げるから」「MRIは使わないほうでなるべくCTでいく」なんて病院……多いんだよ。

まっとうな病院は「最初からMRIで行きます」と言ってくれる。

実は私の場合も、済生会今治だと「造影CT」とすぐ言われるんだけど、松山の赤十字の肝胆膵内科だと「MRIで行きます」とニコッと当たり前にしてくれた。松山の赤十字はつい一昨年だか病院が新調され「めちゃきれい」になっていて、設備も最新。ぜいたくに高性能な3テスラMRIも2台持っている。

でも、愛媛のほかの病院だとそのレベルやれるところ減るわけで……。当然、「造影CTで行きましょう」になっちゃう。

同じ保険診療で値段もさほど変わらないけど(造影CTのほうが造影剤の特殊管理で高いよ)しかも被ばくするし。

MRIなら、造影剤ほとんどなしで行けちゃう。検査結果の精度も変わらないし……むしろMRIのほうが分解能高いんで……。被ばくもしないよ。何度でも気軽にやれる。

こういうことが起きるんだ。毎度。私は患者側なんで……患者の利権防御として当然こういうことをみなさんにアドバイスしておくよ。

ほんと、自分が患者になったら「困る」「わかる」「ツボ」知っているんで。
病院や医師にもオペレーション変えてほしいわ。
毎度要望もしている。

乳がん検診、MRIでやってよ」これなんかも……何度も言ってる。でもたいていの病院は安いマンモ入れて「大量処理で稼ぎたい」んで……マンモに行かせる。

でもMRIのほうが胸、痛くないし、寝てるだけで終わる。しかも精度は高いんだよ。被ばくもないし。

どうみたって……MRIがいいに決まってるんだけど「うちの病院にはないんで」「高いんで」……やらない。

■なんでCT-FFRをやらないのか?
 で、私も「なるべくならリスクが多いカテーテル検査しないでCT-FFRで最初切り分けした方がいいんじゃないの?」って主治医に言った。京大と愛媛県立中央病院の記事もコピーして見せた。

「あー、FFRですね」「いいですよ。これ」「いいと思います」「さっそく紹介状書きます」

え?どういうことよ。最初からカテーテル検査ありきで言っていたんだけどね。

「今回私にカテーテル検査をしろというけど、その検査とFFRでのメリットの違いはあるのですか?カテーテル検査でやるのも心臓への血流の量とかの測定ですよね?一緒じゃないかなあと?FFRでやると意味がないなら、先生の言うとおりカテーテル検査受けますけど、そういうわけじゃないのですか?」

「今回のカテーテル検査でもそれやるのがメインで。CT-FFRの評価はいいです。あれ、日本ではやらないんですよ。アメリカの企業にCTのデータを転送して解析してもらうので。まあ、1日あれば分析結果返ってくるんで」

「日本じゃないんですか?」

「そうなんですよ。さらに、うちの病院はそれに対応したCTじゃないんで。だからやれないんですよ。ごめん」

「だったら、ムリして入院してカテーテル腕に刺して、家族呼び寄せて見守ってもらいながら大ごとに検査しなくても、わかるわけですよね?費用も高額だし」

「そうです」

カテーテル検査で、見つかった時点で処置とかするのかと思った。」
「いや、それは今回はしない。あくまでも検査だけです。」

ふーん。なんだそれだけの違いだったのか?治療方針を切り分けるだけなら、CT-FFRでやれるんだね。

だから、ちゃんと健康保険の対象にもなっているのに。

「ちなみに、今後の心臓の管理を定期的にするのに、造影CTは飲んでいる薬も毎度止めないといけないし、アナフィラキシーと被ばくの繰り返しになるので、MRIにしてもらいたいのですが?MRIじゃダメなのでしょうか?」

「それもですね。MRIでもいいんだけど、実は、うちの病院がそれに対応できなくて。あれ、やれるようにすると1000万円ソフトの負担がかかるんです。だからうちでは造影CTになっちゃうんだ。ごめん」

はー。な、なんだ、そんな程度の低い話で……患者は造影CTに向かわされるのか……。

■造影CTとかでアナフィラキシーを起こしたら?やばいことがある
 それで医師がポツンと言っていたんだけど
「造影CTとかでアナフィラキシーを起こしちゃうと、心臓外科医はその人手術しないよ。手術でも造影剤使ってレントゲンやるんで」

……まじ?つまり、アナフィラキシー出る人は手術すらできなくなる。カテーテルもそうだし……。ということは「じ・えんど」

大事なポイントだね。

■たしかに医療機器の値段は高いけどね
医療機器って、戦闘機や戦車の軍事機器と一緒で「えらい高い」からね。

たとえばMRI乳がんを検査するためには「乳がん用コイル」を買う必要があるんだけど、あれ600万円ぐらいする。ベンツ1台分。

それ保険でMRI一回やってもいいとこ8000円(3割自己負担)ぐらいだから単純に3倍としても病院側のもらえるお金は2万4000円。病院側としては「600万円÷2万4000円=250人スキャンしないと」元とれない。……ただ、できない話じゃないと思うけど。

そうなると病院側も「経営的にむずい」ってなって……入れない。だからしない……。こればっかだね。

こんな具合なんで、あなたは、多分、私レベルで主治医や病院と交渉もしないだろうから……全部いいなりで「あーん」ってお口開けて言われた内容を信じて……お金も高額払って……やってる。

だけど「実は違う道がちゃんとあって」「まともで」「いい」ものがあるんだよ。

それを知るか、知らないか……は大きい。
(内海君:小市民)