内海新聞のブログ

1996年創刊の我が国最初の電子新聞

1978:歯は「連鎖倒産」する

 なぜレントゲンでは虫歯がないかぶせ物の歯が歯髄炎を起こしたのか?病理を考えました。

医師団の推理・シナリオはこうでした。
「今回の歯髄炎の歯のダメージの元がある。それは今年7月に抜歯した左上5番で「歯抜け」になっている状態だった。
これによって
「別の歯で抜けた分をカバーしてかむため」
「1かみ300kgの荷重がかかる力の分散バランスが崩れ」
「ただでさえ弱っている詰め物やかぶせ物をした歯への負担・疲労がたまって」
「左上7番のかぶせ物の歯の内部で」
「クラック(ひび割れ)が生じ」
「ひび割れからミクロン単位で口の中の細菌が入り込み」
「歯髄炎を起こした可能性が高い」

■歯が「疲労骨折」それが「破折」
 実は皆さん知らないというか、歯科医も説明しないと思うのですが「詰め物」「かぶせ物」した場合、その歯の強度は「著しく下がり」ます。特に「神経を抜いた場合」は「致命的に下がっています」

歯は1かみで300kgのハンマーで「うちつけて」固いナッツや骨も、かみ砕けるわけです。それなのに歯が壊れないのは「弾力」があるからです。

弾力……何?それが「歯肉」「歯根膜」などの「ふとん」に歯が埋まっているからです。歯肉や歯根膜が「ダンパー」になっているのです。

すごい巧妙で神秘的なメカニズムです。生物のシステム設計はパーフェクトなんです。

これらを「現代工業製品」で表現すると

「コンクリートやセラミックの刃(歯)、すりこぎ」が「分厚いゴム製のブロック台に固定され」て「上下でぶつかりあって物を粉砕する」感じかな。

でも、ご存じの通り「コンクリート」「セラミック」「ゴム」は「経年劣化」「高温・低温・酸・アルカリ」によって「劣化」しますよね。

なので……定期的に交換する必要が出てくる。

だけど、人体は「自己完結」でそれができる。神経と血液が通った歯は「柔らかいのに固い」という相反する要素を同時に実現しているハイブリッド構造の「生きた刃」であり、300kgの荷重ショックでお互い打ち合っても「タンパク質と軟性組織の歯肉・歯根膜」で「衝撃をやわらげ、ショックを分散」してしまう。

そうすることで、死ぬまで「生きた歯」で食べ続けることができるようにプログラムされている。

その神様が与えてくれた大事なシステムを、人間自身が「甘い食べ物や飲み物」で「虫歯菌で溶かして破壊してしまう」わけです。

歯はカルシウムのハードコーティングによってコーティング部分を新陳代謝で復旧できるので半永久的にもつ。

それを……削って「異物」「プラスチックや金属、セラミック」で「ボンドで貼って覆って」も「貼った境界はミクロン単位ですきまがあるし」「酸・アルカリ・水の浸食」「高温・低温の温度差」がストレスで繰り返されると「破綻」していく。

これ……ミニキャブミーブの屋根にソーラーパネルをボンドやシリコンで貼っても「強烈な太陽光と紫外線で」「数年で劣化して水漏れする」……それと同じことです。

人間が人体に人工物で何かしても……ナマの人体の完璧なシステムには及ばない。

■神経を抜いた歯はいずれ「割れる」
 ということで、歯科治療において「運命の分かれ道」になるのは「エナメル質での防衛が成功するか」「象牙質いって詰め物やかぶせることになるか」です。

大部分の人は「エナメル質での防衛」に失敗します。そして、銀歯やレジンの詰め物、かぶせ物に移行します。それでも神経とっていなければ歯の「新陳代謝」は続けられるのでなんとか長持ちします。

ところが詰め物、かぶせ物のすき間はいくらコーキングしても「無理」だと。ミクロンレベルの話ですから。歯科医が「だいじょうぶだろう」と詰めた程度では詰まっていない。ましてや口の中は「やわらかくゴワゴワ」の部分です。はがれたり、すき間はできてしまう。

そしてそこから細菌・ウイルスが侵入していく。侵入されたら終わりです。内部は無防備の神経と毛細血管がむき出しなので……たちまち感染して食い荒らされる。

こうして歯の表面でなく「内部」で虫歯が静かに進行して「破綻」する。神経を抜くことになる。

神経を抜いた歯は「カルシウムのサンゴのオブジェ」と化す。つまり、冒頭の工業製品の「コンクリートやセラミック」の「かたまり」でしかない。

それが300kg荷重でお互いぶちつけていたら……やがて「ひび」が入りだす。ひびが入るとそこから「水」「細菌」が入りだす……ますます、ひびが広がる……そうやって歯は「割れる」

これが「破折(はせつ)」です。

だいたい虫歯治療して「神経を抜いた歯」の寿命は「15年がいいとこ」らしいです。早いと5~8年で「割れてくる」
★歯根破折(眞坂歯科医院)
https://www.masaka-dental.com/adhesive/index02.html
私もそうやって、過去、30代~40代に治療した歯が今頃「きちんと破折」してきたわけです。

破折した場合「上が水平に割れて欠けた」場合は「残存部分を残してしぶとく生き延びる」ことが可能ですが、「縦に2つに真っ二つに割れた」場合は「抜歯」です。

予断ですが、2つに割れた歯をいったん抜いて「スーパーボンド」で貼り直して埋め戻して歯肉に定着させて再生を図る治療法「破折歯接着治療法」がありますけど。
★破折歯治療法
https://gooddental.jp/treatment-details/fracture/
1本15万円ぐらいの自費で成功率は……低いです。金捨てる元気がある人しかやれずかなりバクチな治療法です。

ちなみに、私も以前、右下7番の一番大きな臼歯が腐って、歯科医が親切に「粘りましょう」って抜いて消毒や手直しして埋め戻してくれたけど……数カ月で「破綻」「化膿」で「抜歯」して捨てるはめになりました。

それぐらい難しいです。

なのでたいていの人は……抜歯を受け入れるしかなくなります。

そして、1つの歯が破折によって「抜歯」になると「それ以外の歯で」「失われた歯の圧力を負担」することになります。この影響が案外大きいようです。

仮に上下の歯が20本だと300kg÷20=15kgが1本の割り当て。
あの小さな歯で15kgくらってる。15kgって……自動車の鉛バッテリーの重たいやつです。あんなのぶちつけてだいじょうなの?

1本抜けたら300kg÷19=15.78kgで1キロ近く各自の負担が増えてくる。2本抜けたら……16.6kgで、1.6キロ増す。

ということで1本の破綻がつぎつぎと他の歯で「詰めた」「かぶせた」「神経ぬいた」部分で「ひびいってドミノで破折」「結果として抜歯でまた他の歯も破折」していくようになります。こうやって80歳行く前にみんな歯がなくなるんだね。

医師団が私が抜歯した時「未来のリスク」として心配していたのが
「武田さんは右利きだから、右からはしで食べ物を口に入れる。すると左側が先に動いてかむから圧力がそちらでどうしても増える」
「左の歯が失われているから、左側の荷重ストレスで別の歯が割れてくる」
でした。予想通り左から割れてきた。

■まともな歯科医は「かぶせ物を材質だけでみない」
 それで、まともな歯科医は「虫歯だけでなく」「歯のかみあわせ」を重視します。

なので、歯のかぶせ物する際、インプラントにせよ「かみあわせ」「上下の歯の圧力バランスがどうなるか?」考えます。

たとえば「かぶせ物はプラスチックやレジンは弱いからダメ」「保険の金属も弱いし」「固ければ固いからセラミック、しかもジルコニアにしましょう」と……する歯科医……多いんじゃないですか?

でも、たしかに「その歯1本だけ」なら「セラミックのめちゃ固いよろい」つけたほうが……いいでしょうね。

けれど、その歯がぶつかる相手がいるじゃないですか?上の歯なら下の歯と「毎日、ぶちあたる」

その場合、片一方が人工の硬すぎるセラミック。もう片一方は人体のセラミックより柔らかいカルシウムの歯……どうなりますか?

生活の知恵でガラスの汚れを「水吹いてアルミ箔でこすったら」「こびりついたカルシウムの曇りがきれいにとれる」……ありましたよね。でも「ガラスをアルミ箔でこすったら」「傷つくのでは?」ならない。

なぜ?「ガラスとアルミの硬度が違う」「アルミのほうがやわらかいのでガラスに勝てないからそれよりやわらかい汚れだけが削れる」……そういうことでした。

それと同じことでセラミックがカルシウムの人間の歯を「削っちゃい」ます。あと「カルシウムの人間の歯がセラミックの打撃の衝撃で負けてひび割れ」起こします。

歯が「ひび割れ」起こしたら……歯髄炎が起きる。絶対起こしてはいけない。

……ですので、その歯をセラミックかぶせるか……下の歯の「素材」を見てから決めないと……いけないということです。むしろ弾性がある保険のパラジウムの金属でもいいかもしれない。

そういう考えをしたうえで、あなたの歯科医は「セラミックでいいです」と言っていましたか?

言ってないと思うよ。うちの医師団は「かみあわせ」「上下の歯との強度の関係」を考察してから私にアドバイスしてくれましたが

「上をセラミックにすると、下が元の普通の自分の歯なので、また破折してしまう」「強ければいいのではなく、適度に相手の歯と強度が近いハイブリッドセラミックがいいでしょう」
ということでした。
★ハイブリッドセラミックとは?利点と欠点をわかりやすく紹介(ノア歯科クリニック 表参道)
https://www.noah-omotesando.com/hybrid-ceramic-merits-and-demerits/
ハイブリッドセラミックは保険でできるし、色はいずれ変色していきますけど……やたら高い自費のセラミックにして数年後下の歯をひび割れさせる……のでは……本末転倒どころか最悪になる。

ですが、驚いたのは「ハイブリッドセラミックスは時代遅れでもうやってません」とどの歯科医でも言われたのです。

かろうじて今、治してもらっている歯科医はベテランのところで「ハイブリッドセラミックは健康保険でできるし、うちでもあるよ」ってやってくれました。そして「硬度がやわらかいから、下の歯とぶつかって削れちゃうけどそのためお互い損傷しないで済むと思う」って言ってました。この歯科医は噛み合わせの専門医でした。

ハイブリッドセラミックが自ら「やわらかくて削れてしまう」ことが「結果として相手の歯を守る」わけです。

噛み合わせのことを勉強して考える歯科医は治療方針、素材も「トータルでどうなるか考えて適切にしようと」なるということです。この違いは大きい。

ちなみに医師団の歯科医も「自分の虫歯は他が硬すぎるので選択肢がないから仕方なく旧式のハイブリッドセラミックにした」ということでした。患者らには値段高い硬いセラミックスやジルコニア……薦めているんだろうけど。

農家が自分で出荷する野菜を農薬だらけだから食べずに、家庭菜園で有機無農薬でつくって食べている……あの実態とそっくりです。
(内海君:小市民)